CHANGE

01.


「これが噂の」
 自来也が旅の途中で珍しい武器を手に入れたと綱手の元を訪れたのはつい先ほどのことだった。
「しかし、本当にこれで十年後にいけるのか?」
「行けるというか、十年後の自分と五分間だけ入れ替わっちまうらしい」
 編集者から次のネタにこんなのどうですか?と渡された『10年バズーカ』を手に自来也は本当かの〜と首を傾ける。
「お前これで十年後の自分と入れ替わってもヨボヨボのじいさんじゃな〜」
 小説のネタにもなりはしないだろうと綱手はヤレヤレと肩を落とした。
「誰が自分で試してみると言った」
 自分が入れ替わってしまったら書けんじゃろうが、と自来也がニヤッと笑う。
「何か良からぬことを考えておるな」
 この楽しそうな顔はきっとろくでもないことを考えているに違いないと綱手は眉間に皴を寄せた。
「ちょっと耳を貸せ」
 そんな綱手の耳元に口を寄せると自来也が楽しそうにそれを話だす。
 予想通りというか、それしかないというか……自来也の話を綱手はやれやれという思いで聞いていた。
 あいつらも哀れだな。
 こんなエロ馬鹿を師匠に持ったばかりに……と同情する。
 可哀想だが、面白そうでもある。
 ニッと笑う自来也に綱手もついつい頬が緩んでしまった。



「遅っせー」
 久々に稽古をつけてやると自来也に言われて演習場に来たというのに何故だか、ここにはサスケがいて当の本人がいない。
 約束の時間からすでに30分は経過していた。
 全くカカシといい、自来也といい、忍者が時間にルーズだっていうのはどういう了見だと思う。
 正直、二人にはこんなふうにのんびりと自来也を待っている時間などなかった。
 もうすぐ中忍試験がある。
 サスケもナルトも修行に里を離れていたので未だ試験を受けておらず、実力はすでに上忍を凌駕していようとも、里においてその位は下忍というなんとも不本意なものだった。 
 同期の友人達が二人を除いて皆中忍になっているから余計だ。
絶対に今回の試験に受かってやる。
前の時と違い落ちる気はしない。
だが一応、試験に備えなくてはと結構真面目な二人は思い修行に余念がなかった。
そんな折、自来也に修行をつけてやるから出て来いと誘いを受けたのだ。
願ったり、叶ったりだと思い来てみれば当の本人はいないし……。
「お前も出て来いって言われたのか」
「ああ」
 ナルトの言葉にサスケが頷く。
 自来也のことを良く知っているだけに、全く良い予感がしねぇ…と、ナルトは思った。
 どうせロクでもないことを考えてるに違いねってばよ。あのエロ仙人!と思った瞬間、サスケの背後にキラリと光るものが見える。すぐさまナルトはサスケの後ろに回りこん
だ。その瞬間、空気の固まりのようなものがナルトを襲い、真っ白な光に包まれた。

「お、おい。ナルト」

 眩い光に思わず閉じてしまった瞳をゆっくりと開く。
 すると目の前にはサスケに良く似た――――――もう少し大人の男が自分の顔を覗きこ
んでいた。
 その表情に焦りのようなものが見える。
「誰だ、あんた?」
 相手は自分の名前を呼んでいた。どこかで会ったことがあるだろうか?よく見れば男は木の葉の額当てをし、中忍以上が着用できるベストを身に着けていた。
 誰だろう?何故、こんな瞳で俺を見ているんだろうか?とナルトは思う。
 それにしてもサスケに良く似ている。
 サスケがもう少し歳をとったらこんな感じだろうか。
 ナルトの言葉に目の前の男は眉間に皴を寄せた。
「お前なあ…このウスラトンカが……」
 何か話し方までサスケそっくりだと思う。
「俺が誰に見える」
 そいつはそう言って、ズイっと顔を近づける。
 綺麗な黒い瞳。その瞳が変化していく。
「お、お前っ!」
 その良く知る瞳のありさまにナルトは思わず声を上げた。

 自分が知る限り、今、木の葉の里でこの瞳を持つものは二人しかいない。
 写輪眼。
「ま、まさか。お前サスケ!なんで、お前、何時の間にそんなに成長したんだってばよ」
 背だってようやく並んだっていうのに……目の前のサスケは今の自分より5pは高い。それに雰囲気も大人びていて、ついさっきまで隣にいたサスケとは思えなかった。
 サスケがやれやれと肩を落とす。
「おそらく10年バズーカだ。自来也様だな」
「10年バズーカ?」
 その聞きなれない言葉にナルトは首を傾けた。
「ああ。そのバズーカで撃たれると十年後の自分と5分間だけ入れ替わるんだ」
 サスケにそう言われてナルトはああっと手の平をポンと叩いた。
 さっきのあの空気の固まり、あの光はバズーカだったのか。
「って、なんで俺にそんなもん」 
「小説のネタにするつもりなんだろ。何度かあったからな」
「え、何度もあったのか?ちょ、それっ、いや、その」
 とりあえず自分には初めての経験なのだが……頭の中がパニクっていてそれ以上は言葉が出ず、ナルトは口を金魚みたいにパクパクとさせるしかなかった。
「まあ、そんな顔をするな。五分すれば元に戻れる。ほら深呼吸しろ」
 サスケにそう言われ、ナルトは自分を落ち着かせるように肺に深く空気を吸い込んで思いっきり吐き出した。
「そ、そうだよな、五分」
 五分なんてあっという間だ。
 そう思いナルトはひとまず気持ちを落ち着かせて時間が来るのを待つことにした。

 しかし―――――――――。
 
 五分が過ぎ、十分が経っても一向に戻れそうな気配がない。
「そういや、初めてアレをくらった時、一度だけ中々戻って来ないことがあったな……」
 ふと思い出したようにサスケが呟く。
「中々って?」
「丸二日―――――」
「二日!!」
 思わずナルトは大声で叫んだ。
 サスケは妙に納得したように「そうか、あの時のか」とブツブツ呟いている。
 そんなサスケにナルトも少し余裕が出てきた。
 二日は長いが帰れることは帰れるみたいだ。
 そうと分かればとニマリと笑う。
十年後の未来。
これはカナリ面白い。
 どうせならサスケだけじゃなくていろんなヤツの十年後にも興味ある。
 そう思うとワクワクと胸が弾んだ。



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