朱色の宝珠 一部抜粋
この珠が何なのか?
ナルトはその事を調べる為、川の国の神社に向った。人知れず忍び込み、巻物や書物を調べ一本の巻物を手
に入れた。
『王妖神記』
「この巻物に五つの神具とその力について書いてあった」
どうやらサスケの読んだ書とは異なるようだ。ナルトの持っている巻物が本家本元でサスケの読んだものはそれを捩ったもののようだ。
「で……俺は今それを集めてる」
「何かあるのか?」
集めるとどうなるのか?サスケの読んだものには書いていなかった。
だが、途端にナルトが口を硬く結ぶ。
「それは……まだ言えないってばよ」
ナルトはそう呟いて、温くなったお茶を一気に喉に流し込んだ。
「じゃあ次だ。それで、何でお前は俺の名を名乗っている」
サスケがそう言った瞬間、ナルトは口の中に残っていたお茶をピュッと吐き出し、ゴホゴホと激しく咳き込む。
涙目になっているナルトの背中をポンポンと叩いてやりながら、サスケは息をフウッと吐き出した。
「で?」
「いや…その…あの…だってばよ……」
ナルトはしどろもどろに言葉を発しながら俯いて、両方の人差し指の先をくっ付ける。
「……誰かが探しに来たらマズイと思って……」
「確かにな。潜入捜査の際には偽名やコードネームを使うのが通例だが……。それで何で俺の名前なんだ!」
サスケはいじけているナルトの右の耳を強く引っ張った。
「いっ、痛てぇ。何すんだよ!」
「うるせえ!」
ターゲットの家には忍が来るだろうから婚約者に目をつけたのは褒めてやっても良い。だが、何故偽名が『サスケ』なのか?
(俺に対する挑戦か?)
「だ、だってよ…思いつかなかったんだもん」
「あぁ?」
「だから思いつかなかったの。面接に言った時、親方に名前は聞かれてとっさに本当の名前じゃダメだって思ってさ。んで他の名前って焦った
らお前の名前しか出てこなくて……そんで咄嗟に名乗っちまったんだってばよ」
一気に言葉を捲し上げてから、ナルトはうーと唸り声を上げた。
その瞳がサスケに向って、何だ、文句あるか!と言っている。
「あるに決まってんだろ。このウスラトンカチ」
本気か?冗談か?多分、百パーセント嘘偽りない言葉にサスケは深いため息を漏らした。
「何だよ!さっきからハーハーとため息ばっか漏らしやがって」
ナルトがブスくれる。
「お前もさっきから拗ねてばっかいるんじゃねえよ!」
十八になり、上忍になってもこういう所は全く成長しない。
「心配掛けさせやがって」
死んだかもしれないと聞かされて皆がどれだけ心を痛めたと思っているんだ!
サスケの言葉にナルトは目を見開きシュンと肩を落とした。
(全く拗ねたり、落ち込んだりややこしいヤツだ)
だけど、こんな些細なやり取りを喜んでいる自分がいる。
目の前にナルトがいる。ずっと会いたいと思っていた。
そっとサスケはナルトの金の髪に触れた。
「サスケ……」
ナルトがその手をギュッと掴む。
グイッと引き寄せられ、サスケはナルトの胸に飛び込むような格好になった。
「な…てめぇ……」
「ごめん、でもさ……」
腕の中で頬を染めるサスケの耳元にナルトが唇を寄せる。
「俺、サスケに会いたかったんだってばよ」
だからそんな風に優しい笑顔で触れられたら堪らない。
ナルトの言葉にサスケは首元まで赤く染め、顔を胸に埋めた。
トクントクンとナルトの心臓の音が聞こえてくる。
(生きている)
やはり生きていた。
死んだなんて言葉を信じたことは一度もない。
だが、こうして生きていると実感できることが嬉しかった。
「サスケ…良い?」
「聞くなバカ」
「うん、ごめんってばよ」
そう言って、ナルトはキュッとサスケの身体を包み込んだ。
ナルトの唇が優しくサスケの唇を覆う。
啄ばむような口付けがくすぐったい。
僅かに唇を緩めるとナルトの舌が隙間を縫って入ってくる。
「ん…」
口中を隈なくナルトの舌が這う。熱い舌が歯列を辿る感触にサスケは身体を震わせた。
熱い。
舌を絡み取られ、サスケは朦朧とした頭で思った。
すぐ傍にナルトがいる。
手を伸ばせば触れられる。
そう思うと胸が熱くなる。
かつては自分から手放した温もり。だけど一度手にしてしまうと放すことができなくなっていた。
ナルトを想い、一人で耽った夜もある程に―――――。
自分の中で『うずまきナルト』という存在は大きくなっていた。
里を抜ける前よりも。里を抜けた時よりも。
傍にいたものが急にいなくなる感覚を思い出してしまったあの時、サスケは気が狂いそうになった。
カカシの言葉が宇宙人の語りごとのように思えてならない。
皆、何を言っているんだ?
死んだ?誰が?アイツが?
見届けろと言った。傍にいろと言った。決して自分の信念は曲げないと言った。
アイツが死んだなんてありえない。
だから捕まえる。どこに居ても、何があっても捕まえる。
その想いがこの三ヶ月間、サスケを支えていた。
与えられる温もりにサスケの頬に冷たい何かが伝う。
「サスケ…」
ナルトがギョッとして声を上げた。
「ど、どうしたってばよ?お、俺、今、舌噛んだか?そんな感じしなかったってばよ。えっと…痛いのか?サスケ……」
オロオロするナルトにサスケは頬を赤く染め、唇を尖らせた。
「何でもねえ。このウスラトンカチ」
まさかキスに感極まって泣いてしまったなんて……一生の不覚だ。
優しいキス。
久しぶりの温もりが逆に胸の痛みを呼び起こしてしまうなんて、予想外も良いところだ。
「何でもねえよ」
サスケはコツンとナルトの肩口に額を押し当てた。
ゆっくりとサスケが顔を上げると、ナルトの顔が近づいてくる。
そっと誘うように瞳を閉じてやると、再び唇が重ねられた。
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