金の宝冠 虚無の楽園 一部抜粋

 小さな粒がヒラヒラと降り注ぐ。

 辺り一面、美しい雪景色が広がっている。深々と降り積もる雪にナルトはハアっと白い息を吐いた。

 自分は一体何をしていたんだろう。

 思い出そうとするが、頭がひどく痛む。

 凍てつくような雪の中、呆然と立ち尽くすナルトの目の前には小さな石の社があった。

「ここは?」

 この場所に見覚えがある気がする。だが、どこなのかやはり思い出せない。

 ズキズキと痛む頭を押さえつつ、ナルトは社に近づいた。

 社にも白い雪が積もっていた。

 雪を払いのけ、冷たい石のそれに触れる。

「俺は……」

 どうしてこんな所にいるのだろう。

 肩に頭に雪が降り注ぐ。

「そうだ…俺は……」

 痛む頭で思い出す。

 確か誰かを待っていた。この場所で約束していた誰かと……。

「誰…か?誰だったっけ?」

 瞳を伏せれば、瞼の奥に誰かの顔が浮かんだ。

 それはとても懐かしくて愛しい。

 あれは誰だっただろう。

 自分は彼と約束をしていた。そして最後の別れを告げる為にここに来たのだ。

 もうすぐ彼はここにやって来るはずだ。

 約束を果たす為に……。

 ほら、馬の蹄の音が聞こえてくる。 

 雪と同じ白い馬の背に乗って彼がやって来る。

 

「サスケ」

 

 そう呟いた自分の声にナルトはハッと我に返った。

 どうやら夢を見ていたようだ。夢の中と同じように頭がズキズキと痛む。

「俺、どうしたんだっけ?」

 ナルトは頭を抑えつつ体を起こす。

「うっ」

 頭だけではなく、全身に痛みが走り思わずうめき声が零れた。

「なんだ……」

 まるで全身打ちつけられたように痛む。顔を歪めながらナルトはゆっくりと周囲を見渡した。

「どこだってばよ……ここ……」

 辺り一面まるで雪の中にいるかのように真っ白だ。

 いや、よく見ればそれは雪ではなく柔らかな白い砂だった。

「あっ」

 思わず口を開く。ナルトが座っている場所から少し離れた場所に白い砂が注がれているのが見える。その向こうには綺麗な川が

流れていた。

「どういうことだってばよ」

 記憶が正してければ自分は砂漠の地下にある古代遺跡にいたはずだ。遺跡の奥深くへ進むと外に出た。いや、その表現は正しくは

ないかもしれない。砂漠の下にできた空間に出たのだ。まるでそこは遺跡から続く庭園のようで、上を見上げれば金の砂。砂は今、ナルト

が目にしているものと同じ様に上から降り注いでいた。そして大きな木。ナルトはふと思い出した。そうだここはまさしく神殿の庭園そのも

の。遺跡と一緒に木々も砂漠の下に沈んだように思えた。そこでナルトは彼に出会った。自分と同じ顔をした者。ただ違うのは瞳の色だっ

た。ナルトの空を映したような青い瞳と異なり、彼の瞳は降り注ぐ砂と同じ様に金色をしていた。

「あの時……」

 ナルトは金の宝冠を見た。そして促されるままそれを頭に載せた。

 ハッとしてナルトは自分の頭の上を確認する。

 そこに確かに被ったはずの金の冠はなかった。

 最初は何ともなかったのに……。ふとその時のことを思い出しナルトが顔を歪めた。

 自分と同じ顔の男に額に口付けられたのだ。しかもその瞬間、冠が一回りも二回りも小さくなったように感じられ、キュウキュウと締め付

けられた。

 激痛が走り、そのまま意識を失ったのだ。

 それからどうしたのだろうかと考える。

 サスケの声が聞こえた気がしたがよく覚えていない。

 夢だったのか、現実だったのか定かではなかった。

 そして気づくとここにいる。

 よく見れば川に木の根のようなものが上から垂れ下がっている。いや、ようなものではない。それは木の根だった。

 近づいて上を仰ぐ。

 本当に不思議な光景だった。

 自分は木の根の下にいるのだ。

 そして金の砂は白い砂となり、更に下へ降り注いでいる。

 砂漠の砂は高温で浄化され細かい粒子の金色の砂になり、更に不純物や老廃物を廃し、微砂も除去されて更に細かく分解されたそれは

砂というよりは粉のようだ。

 こうして断層を作りながら、浄化され自然に還っていくのだとナルトは思った。

 カラカラに乾いた砂漠の下にも水が通り、木が根付いている。立派な根をつけた木はすでに何百年という時をこの砂の下で過ごしてい

るのだろう。だが、いつかはこの木も砂の上に葉を伸ばし、森を作るのかもしれない。そうしたらきっと広大な砂漠は、広大な森へと生まれ変

わるのだろう。

 森が生まれれば生命が息づく。

 新たな命と共に新たな大地が育っていく。

 それはとても素晴らしいことだ。

「で、それはそうとして、これからどうすっかだよなー」

 ナルトはぽりぽりと頭を掻いた。

 とりあえず木々の根を伝って上によじ登って行く他ないだろう。流れる川に伸びる長い根。長さは五・六メートルは余裕であるように思

える。

「こ、このくらいたいしたことないってばよ!」

 こちとら上忍だぞ!馬鹿野郎め!と自分を叱咤激励してナルトは普通の木の幹ほどもある太い根によじ登った。