僕の冷蔵庫



 任務の集合時間はとっくに過ぎていると言うのに……。
 真夏日の炎天下の下でサスケはイライラと唇を噛んだ。
「もうナルトのヤツ。何してんのかしら。今日は珍しくカカシ先生がわりと早く来たっていうのに」
 サクラもイラついているようで、腕を組んで唇を尖らせる。
 その横でカカシが「わりとってね……」と苦笑いを浮かべていた。
「それにしても確かに遅いね」
 カカシが太陽の位置を確認する。
 第七班にとって集合時間はあってなきのごとしではあったが……。
 今日はカカシが一時間遅れくらいで着た。
 それからさらに一時間近く待っているがナルトは姿を現さない。
「仕方ないな〜」
 カカシはやれやれと肩を落とした。
「もしかしたら家でぶっ倒れてるのかもしれないし、ちょっとサスケ見てきてやってくれる?」
「な、何で俺が!」
「それなら私も」
 突然のご指名にサスケは驚きの眼差しをカカシに向ける。それに便乗するようにサクラも手を上げた。
「いやいや。任務をこれ以上遅れるわけにはいかないでしょ。今日の任務は薬草探しだし、薬草の知識ならサスケよりサクラの方が上だからな」 
 確かに、日が暮れれば依頼された薬草を探すことが困難になる。
 知識の面を言われると確かにその通りなのでサスケはグッと言葉を飲み込んだ。
 サクラも本当は着いていきたかったが、自分がサスケより上と評価されたのが嬉しかったのかそれ以上は何も言わなかった。
「じゃあ、俺とサクラは任務に向かうから。サスケはナルトをお願いね」
 カカシはそう言うとサクラを伴って行ってしまう。
「頑張って終らせてくるね」
 サクラはサスケを気遣うように手を振った。


「全く、あのウスラトンカチ」
 ムカムカと胸にこみ上げてくるものを無理やり押さえつけて、ナルトの家に向かう。
 ただ寝ていたりしたらぶっ殺してやると胸の中で悪態をつきながら、ドンドンと扉を荒々しく叩いた。
 返事は……ない。
 もう一度、叩いてみる。
 やはり返事はない。
 サスケは訝しげに眉を寄せて、扉のノブに手を掛けた。
 すると、鍵は掛かっていなかったらしく、扉がスムーズに開いた。
「おい、無用心だぞ」
 忍びたる者いつ何時、何があるか分からないというのに……。
 それにしても……開いた扉の向こうはやけに静かだで、玄関から見える限りでは誰もいなかった。
どこかへ行ったのか?
 それとも本当に寝ているだけなのか?
 しかし玄関から丸見えのベッドには誰かが眠っている感じはない。
 サスケは考えつつ、真実を探るべく気配を消して部屋に一歩足を踏み入れた。
「ううう…」
 その瞬間、どこからかうめき声のようなものが聞こえてきた。
「ナルト、いるのか?」
 サスケは急いで声のした方向に視線を向けた。ナルトは玄関のすぐ左側の台所の隅。冷蔵の隣で身を屈め丸くなり唸っていた。
「おい、どうしたんだ」
 額からは無数の透明な汗の粒。
 真っ青な顔でお腹を押さえ、ナルトが「んんっと」唸る。
「あ、あいつに……それ」
 ナルトは体を震わせながら、ゆっくりと台所のコンロ脇に置かれたものを指差した。
 そこには飲みかけの液体が入ったグラスが一つ。
「あれがどうかしたのか?」
 白い液体、牛乳か?
 刹那、ナルトが涙目で訴える。
「あ、あいつにやられたってよ!」
「はっ?」
「賞味期限一ヶ月くらいすぎててもいつも何ともねえのにっ」
 その言葉にサスケは目が点になった。
 やられたって?あいつ?牛乳?
一ヶ月……それは流石に過ぎすぎだ。腹を下して当然。いつも何ともない方がおかしい。
「くそっ!負けたってばよ」
 真剣に悔しがっているナルトに最初は呆然としていたサスケだが、徐々に怒りが沸いてくる。
「この、ウスラトンカチ!」
 ナルトの脳天に一撃加える。
 それから文句を言う隙を与えず、首根っこ捕まえてベッドに連れて行く。
 馬鹿だ、馬鹿だとは思っていたが本当の大馬鹿だコイツは!サスケはそう呟きながらナルトをベッドに放り投げた。
「とにかくお前は寝てろ!」
 額に怒りの交差点マークを浮かべてナルトに怒鳴りつける。
 ナルトは拗ねたように唇を尖らせたが、すぐに襲ってきた腹痛にもんどりうった。
(まったくこの馬鹿は…)
 馬鹿につける薬が欲しいと思う。
「腹痛のクスリは?」
 イライラした口調で問いかければ「ない」と情けない声が帰ってくる。
「忍びなら常備薬ぐらい用意しておけ!」
 そんなものは基礎の基礎だ。
 これだから放っておけない。
「ううう」
 ナルトは涙目で何か訴えるようにサスケを見上げた。
 その瞳にサスケは怒りを通り越して、何かに観念したような気持ちになってハアっとため息を漏らした。

 結局、腹痛が治まったのは二日後のこと。その後、第七班には任務とは別にナルトの家の冷蔵庫チェックと言う仕事が加わった。


−END−



腐った牛乳が結んだ縁(笑)
ナルサスというよりはナルトとサスケって感じですが
おそらくこの後、度々面倒を見ることになり二人の仲は
深まっていくことと思われます。