「知ってるか?青い紫陽花の下には死体が埋まってるらしいぜ」
サスケの言葉にナルトは顔を上げた。
「何だよ、それ?」
そんな話、聞いたこともない。
「別に、ただ。前にそんなことを聞いただけだ」
サスケはそう言うと目の前の花をジッと見つめた。
本日の天気は曇り。どんよりと重たい雲が空を覆っている。
雨が降っていないだけ幾分マシかもしれないが・・・・・・それでも梅雨の時期独特の湿った空気が不快で気分を重くさせる。
しかも任務はDランクで落し物探索。先ほどからずっと地面を這ってその落し物を探していた。
「でもよ・・・本当に見つかんのかよ」
落し物は依頼主が二十年前に死んだ夫に貰ったという「婚約指輪」だ。先日、隣町の娘の所に行く為にこの辺りを通った時に泥濘に足を取られ転んでしまったらしい。その際にかばんの中にしまっておいた指輪ケースが飛び出てしまい、どこかに転がってしまった。依頼人もくまなく探したが分からなかったらしい。
広い森の中で、ケースに入っているとはいえ、小さなそれを見つけるのは困難だ。しかし、これも仕事と四人は左右二手に分かれ、依頼主がこの転んだらしい場所を探していた。
しかし、一向に見つからない。
フウッと息を吐き、ナルトは大きな木の根に尻をついた。
「なあ、ちょっと休憩しようぜ」
目の前のサスケに声を掛ける。
サスケも今日はめずらしく「そうだな」とナルトの言葉を素直に聞き入れ、隣に腰を降ろす。同じ体制で探し続けるのにサスケも疲れたのだろう。座るとフウッと額の汗を拭った。
ぼんやりと景色を見ていると、紫陽花の青い花が目に付いた。
そういえば・・・忍術学校の花壇に見事な赤い紫陽花が咲いていたを思い出す。今度、紫陽花を植えようかな・・・そう思って眺めているとサスケが思い出したように呟いた。
「知ってるか?青い紫陽花の下には死体が埋まってるらしいぜ」
そういえば、紫陽花はいろんな色があるけれど、頭にパッとイメージで浮かび上がるのは青、赤。白にピンクといった所だろうか?
「何で、青なんだ?」
忍術学校の花壇の花は赤かった。
「酸性の土だと青い花が咲くらしい。人間の体は酸性だろ。だからそう言うのかもな」
サスケはそう言って紫陽花の花から顔を背けた。思いつめた表情にナルトはドキリとする。何を考えているのかは分からない。だけどサスケがこういう顔をする時は―――――自分の知らない誰かのことを考えている時だ。
ナルトは思わずサスケの手に自分の手を重ねた。
キュッと冷たい手を握る。
「ナルト?」
訝しげに見つめるサスケの視線を感じ、ナルトは顔を背けた。
顔が熱い。
紫陽花を見つめる瞳に――――サスケが消えてしまいそうな気がして――――。気がついたら繋ぎとめるようにサスケの手を握っていた。
「俺たちもいつか土に還んのかな…・・・」
波の国で出会った少年の顔が頭に浮かんだ。並んで土に還った二人のように…自分達にもいつかそんな日が来るのだろうか?
「ウスラトンカチ」
サスケがそう言ってナルトの手を握り返えす
「俺らは強くなるんだろうがよ」
だからさっさと終らせるとぞ、とサスケが立ち上がる。
「お、おう。だな。こんなつまらねえ任務はさっさと終らせて修行するってばよ」
もっともっと強くなる。モタモタなんかしていられない。
紫陽花をチラリと見てナルトは立ち上がった。
「紫陽花は赤が良いってばよ」
「単純だな」
「良いの。そういや、紫陽花の花言葉って知ってるか?」
「俺が知るわけねえだろ」
酸性だと青い花が咲くとか、そういうことは知っているクセに花言葉なんかは知らないとというサスケがなんともらしくて笑ってしまった。
「お前は知ってんのかよ?」
「いのじゃあるまいし、俺が知ってるわけねえってばよ」
でもあんまり良い意味じゃなさそうだとナルトは思う。綺麗な花はなのになんかだかもったいないような気がした。
「でも俺・・・この花、嫌いじゃないってばよ」
雨を連想させる花だけど・・・・・・水の雫が一番似合う花だと思う。
「あ、でもさ。でもさ。青が酸性ってのは分かったけどさ、白やピンクは?なあなあ、なんで白とかピンクの花が咲くんだ?」
「そこまで、俺が知るかよ」
「えー」
ナルトはわざとそう言って頬を膨らませる。
「さっさと続きやるぞ」
サスケは顔を歪ませて、ナルトの手をグイッと引っ張った
日が落ちてくると見つけるのは困難だ。
「おう、さっさと終らせて修行、修行!サスケ、今日は付き合えよな」
「お前が俺より先に見つけたらな」
ナルトの言葉にサスケは不敵な笑みを浮かべた。
「おおーし。負けないってばよ」
俄然、やる気に火がついて、二人は再び地面に顔を擦り付け、目を凝らした。
−END−
ちなみに紫陽花の花言葉は花色の変化から「心変わり」などの花言葉もありますが、「ひたむきな愛情」や「家族の結びつき」を象徴する花でもあるそうです。
*NSONLY3六二九事変発行のペーパーより再録