Happy Merry Christmas

※パラレル。現代設定です※

 

「はあ…」

 何度目のため息だろう。

 赤い服を身に纏い、白い髭をつけ、手には色とりどりの風船を持って歩きながらナルトは暗い面持ちで歩

いていた。

 サンタは子供に夢を与える職業だって分かっているのに、昼間の電話を思い出す度、暗い気持ちになる。

(そりゃ確かに、最初に約束を破ったのは俺の方だけどさ……)

 高校生活最後のクリスマス。

 春になったら何もかも変わってしまう。

 サスケは推薦で仙台の大学への進学が決まっていた。サスケの勉強したい分野を開講しているのがそこし

かないらしく、春からは寮に入る。

 一方、ナルトは就職する予定だった。

 両親を早くに失くしたナルトが遠い親戚のサスケの家に引き取られて六年――。

 サスケの両親には進学を進められたが、高校を出して貰っただけでもありがたいのに、その上、大学まで

というのはおこがましいとずっと思ってきた。

 だから就職することに迷いはなかった。

でも長い休暇を一緒に過ごせるのはこの冬休みが最後かもしれない。

 春休みは何かと忙しいだろうから、冬休みの前半、必死にバイトして、後半は卒業旅行に行く計画を立てた。

 おかげで年内はほぼバイトで埋まってしまったが……。

だけどせめてクリスマスイブくらいは一緒にいたい。

 バイトは夕方までにしてもらい、夜は一緒に食事に行く約束をしていた。

 それなのに今朝になって、交代要員がバイクで転倒し足を骨折してバイトに来 

られなくなってしまった為、帰れなくなってしまっている。

仕事が終わるのは夜九時。

サスケとの約束の時間は六時。百パーセント間に合わない。

 連絡した時のサスケの態度は冷たかった。

「解った」

 ただ一言、それだけ。

 ツーツーと虚しく鳴る電話の音にナルトは受話器を握り締めたまま、しばらく動けなかった。

 

 

ハアッとナルトはまたため息を漏らす。そんなナルトの後ろ頭に強烈なチョップが放たれた。

「い、痛って〜」

 ズキズキと痛む頭を摩りながら振り返ると、幼馴染でクラスメイトの春野サクラが口をへの字にして立っ

ていた。

 白いエプロン姿の彼女はナルトと同じバイト先で働いている。

 全国にチェーン展開しているケーキ屋だ。

 最近のブランド化で客が減っているという話だったが、流石に今日はクリスマスケーキを買い求める客で

店内はごった返していた。

「何、サンタが浮かない顔しているのよ」

 呼び込みのサンタが暗い顔していていては売れるものも売れなくなる、とサクは腰に手を当てて言った。

「まあ、約束があったのに無理に頼んだのは悪かったけどさ」

「別にサクラちゃんのせいじゃないってばよ」

 サスケとは家に帰ればいつでも会えるんだし、と言って笑ってからズキンと胸が痛んだ。

「サスケ君にもナルトにも、このお詫びは今度ちゃんとするから。とにかく今日は頑張って、ね」

 長い付き合いのサクラはそんなナルトの心中を察したように苦笑いを浮かべ、ポンと肩を叩いた。

 

 

クリスマスと書いて、クルシミマスとは良く言ったものだと思う。

 夕方からはナルトもサンタの格好のまま、店の前の臨時ワゴンでクリスマスケーキを販売していたのだ

が、息をつく間もない忙しさだった。

 本日、最後の客が店から出てくる。

カラになったワゴンを片付けながら、これで終わりだとナルトは心の中で息をついた。そして自分の隣を

通り過ぎていく、最後に客に笑顔で挨拶する。

「ありがとうございました!」

そう言ってからハタと動きを止める。

 よく見知った顔が人の悪い笑みを浮かべていた。

「サ、サスケ!」

 手にはナルトが先ほどまで売っていたものと同じケーキの箱を持っている。

「お、お前っ、何で!」

「別に。母さんに頼まれたんだよ」

それは嘘だとナルトは思った。

 もう九時前だ。

 会社帰りの父親なら仕方のない話だが、クリスマスパーティーをするには遅い           

時間である。

 しかも、団扇家は母親のミコトさんとナルト以外は総じて甘い物が苦手なのだ。

「ほ…頼まれたねえ……」

「何だよ。じゃあ、俺は帰るからな」

 サスケはそう言うとナルトに背を向けて歩き出す。

「ちょ、ちょっと待てってばよ」

 ナルトは慌ててサスケの腕を掴み引き止めた。

「もう、バイト終わるからさ」

「この寒空でか」

 ナルトの言いたいことを察してサスケは空を見上げた。

 先ほどからチラチラと白い雪が降り始めていた。

 クリスマスには相応しい夜だ。

「そこに喫茶店があるから。確か十二時までだったと思うし……」

 そう呟いてナルトは腕を掴んだまま、サスケを見つめた。

 サスケがわざとらしくため息を零す。

「コーヒー代はお前が持てよ」

 それからそう言って顔を背けるサスケにナルトは顔を綻ばせた。

 何だかんだ言っても優しい。

 今だって迎えに来てくれたに違いない。

 言い訳にケーキを買うサスケが愛おしくて、抱き締めたくなる気持ちをナルトがグッと抑えた。

 

 何せここは公道で人通りも多い。

 こんなところで抱き締めたりなんかしたら、速攻で拳が飛んでくるだろう。

「じゃあ、俺。すぐに着替えてくるから!すぐ行くからな。待っててくれってば

っよ!」

 サスケにそう言って、赤くなった鼻を擦りながら店に飛び込んだ。

 

 

 

ホワイトクリスマス。

 夜の街を並んで歩く。

デコレーションされたツリーの前で二人は立ち止まった。

 ナルトはそっとカバンから包みを取り出した。中には白いマフラー。ナルトはそっとそれをサスケの首に掛ける。

「これは?」

「クリスマスプレゼントだってばよ」

 思っていた通り、サスケには白が良く似合う。

「ウスラトンカチ」

 僅かに頬を赤く染めて、サスケはそう呟いた。そして紺色の自分の手袋を外し、ナルトの手に嵌める。

「別に買ってなかったわけじゃねえからな」

 ちゃんと家にある、と拗ねたように言うサスケをナルトは笑って抱き締めた。

「明日、ちゃんとケーキ食えよな」

 ナルトの肩に顔を埋めてサスケがそう呟く。

「もちろんだってばよ」

 

18歳のクリスマスイブが終わる。

 来年の今頃、自分達はどうしているだろう。

 不安はある。

だけど、きっとこの気持ちは変わらない。

 この先も、ずっと―――――――――。

 

Merry Christmas


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お付き合い下さりありがとうございました。クリスマスネタです。去年の冬コミのペーパーからの

再録です。今年(冬コミ&インテ)配布のペーパーはこのSSの続きになってます。早くUPしようと

思いつつ年越ししてしまいました。

現代設定で高校生×高校生(苦笑)。学生設定好きなんです。本当は最初木の葉学園設定にしようか

と思ってたんですが、気がついたらこうなってました(笑)

この先とかもちょっと書いてみたい。引き取られてて初めてサスケの家に来たナルトとか。

思春期になってお互い意識しだす二人とか。同じ歳なので双子のようなもんなんですが、でも

二ヶ月下と言うだけで末子扱いを受けるナルトとか。

萌えます!

同じ歳の血の繋がらない兄弟とか大好きなんですよ。