テラスに腰掛け、二人並んで月を見上げていた。 やっと鳴門に会えたのに言葉が出てこない。 佐助は瞳を伏せ、小さく息を吐いた。 「そんな顔すんなってばよ」 鳴門は苦笑いを浮かべる。 「別に。俺はいつもこんな顔だ」 「またまた〜」 鳴門はそう言って笑うと佐助の両頬を摘んで自分の方へ顔を向けさせる。 「ほら笑って、笑って。プッ」 「…って笑えるか!」 深刻な雰囲気も鳴門に掛かっては形無しだ。 ゲラゲラと笑う鳴門につられて佐助も顔を綻ばせた。こういう所が鳴門のすごい所だといつも思う。 太陽みたいに暗いモヤモヤしたものもカラッと晴れにしてしまう。 何だか久しぶりに笑った気がした。 「バカ」 「へへん。良いんだってばよ。俺はバカで」 鳴門はそう言うが本当はバカなんかじゃないない。勉強はできないが、頭の回転は速いし、機転も利く。 だけどすぐ調子に乗るからそんな事は言ってやらない。 佐助は笑いながら鳴門の頭を叩いた。 「…って、何だよ!」 「別に。叩いたらもうちょっと回りが良くなるかと思っただけだ」 そう言うと鳴門は頬を膨らませ、口を尖らせる。 「ちぇっ、誕生日に手紙が入ってたから何か良いことでもあんのかと思ったのによ」 「ないとは言ってないだろ」 佐助はそう言うと口の端を上げて笑った。 「何か企んでる顔だってばよ」 眉を潜め、警戒するようにナルトは体を引く。長い付き合いだ。こういう顔をする時はろくなことがないと、わざとらしく怯えるナルトに佐助はため息を漏らした。 「おいおい。お前、俺が好きなんじゃなかったのか?」 「もちろん好きだってばよ。だから、こうして……」 監視の目を掻い潜って此処に来た。 「分かってる」 そう呟くと佐助はそっと鳴門の肩に手を置いて、自分の唇を相手の唇に押し当てた。 自分の誕生日に鳴門がしたようにそっと優しく……。 佐助が耳まで赤く染めながら唇を離すと顔を背けた。 「あっ……」 鳴門は突然のことに驚き、呆然と口を開いていたがようやく何が起こったのか把握して顔を赤く染めた。 「あ、佐助っ〜」 間の抜けた声を上げ立ち上がる。 「何だ?」 意地悪く答えてやれば、鳴門が真っ赤な顔で言った。 「ズルイってばよ」 そう呟きながら鳴門は再び佐助の隣に腰掛ける。 「俺の気持ち知ってるくせに……」 鳴門は顔を伏せそう言ったきり黙りこむ。 「鳴門……」 想像していた反応と少し違い、佐助は心の中で戸惑いを浮かべた。 もっと真っ赤になって喚きたてると思っていたのに……。 嫌な胸騒ぎがして、佐助は鳴門を凝視した。その視線に気づいたのか、鳴門がゆっくりと青い瞳を佐助に向けた。 そこにいつもの鳴門の明るい笑顔はなかった。 今にも泣き出しそうな顔で佐助を見つめていた。 「佐助…」 鳴門が切なげに佐助の名を呼ぶ。 刹那、腕を引かれ鳴門の胸に包まれる。 「鳴門…」 「佐助が悪いんだからな。俺、折角諦めようって思ってたのに……」 鳴門はそう呟いて、佐助を強く抱き締めた。 胸の鼓動と温もりが伝わってくる。 佐助は鳴門の腕の中で瞳を閉じた。 自分たちに残された時間はあと僅かしかない。 そう思うと何もかもがどうでも良くなってくる。 今の自分には鳴門を突き放す理由もない。 「諦めなくて良い」 「佐助?」 「俺もお前が好きだから」 背に腕を絡める。鳴門の鼓動が早くなったのを感じ、煽るように胸に顔を擦り付けて笑みを浮かべた。 もう自分を抑える必要はない。そう思うと急に気分が軽くなった。 「佐助…一度だけ…」 鳴門が思いつめた声で呟いた。 「一度だけ触れて良い?」 そっと鳴門が佐助の頬に触れる。 顔を引き上げられ、佐助は目を細めた。 「何て顔してやがる」 「うるさいってばよ」 鳴門の青い綺麗な瞳からは涙が溢れていた。 「バカだな」 本当に大馬鹿だ。 自分も鳴門も――――――――。 佐助は鳴門の涙を指で掬う。それからゆっくりと瞳を閉じた。 |