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CHANGE
07.
「んー」
サスケのヤツ酷いってばよ!
ドアノブをカチャカチャと音を立てて廻しながら、うめき声を上げた。
押しても引いても、扉はビクともしない。
力任せに体当たりしても、ドンと音がするだけだった。
窓も同じで、こうなったらガラスを割って……とも思い椅子を投げつけてみたが、結界に跳ね返された。
「はあ…」
いい加減疲れてナルトは扉に背を預けへたり込む。
別にどうしても出たいというわけではないのだ。ただこんな風に閉じ込められているのが気に入らないだけ。
ただ待ってろって言葉だけを残して――――。
置いていかれた。その想いがナルトの胸に広がって、いてもたってもいられなくなる。
もし、サスケが此処に戻って来てくれなかったら?
そんなことはありえないと思いながら、ナルトは考えてしまう。
閉じられた空間のせいだ。
わけのわからない不安が込み上げてくる。
ここは自分の知る火影屋敷にとても良く似ている。
だけど違うのだ。
上忍の装いで、仲間と共に消えていったサスケの後ろ姿を思う。
当たり前のようにこの屋敷に馴染んでいた。
いつもここで仕事しているかのようだ。
それにあの大量の書類。
家を出る時、シカマルはサスケから書類を受け取らなかった。と、いうことはあれはシカマルが頼んだ書類ではないということだ。
わざわざシカマルがサスケを呼びに来たのは何故だ?
「やっぱりアイツ……」
考えたくはないが、やはりそうなのだろうか?
自分の夢。絶対になると誓った夢だ。
十年後、俺はサスケに負けて火影の座を譲ったのだろうか?
だけど複雑だが譲るならサスケ以外にありあえないと思う。
あとはカカシ先生か……。
「あ、カカシ先生!」
完全に忘れていた師のことを思い出しナルトは声を上げた。
カカシが火影ならサスケが書類整理を手伝わされているのも納得できる。
こうして面倒な事が起こって呼び出されることもだ。
「そっか〜先生か……」
先生なら仕方ない。
年も上だし、実力もある。
「あ〜あ。なんか腹減ったってばよ」
動いたせいで昼食はすっかり消化してしまっていた。グーと音を立てる腹を押さえ、ナルトは肩を上げた。
ぼんやりと窓に視線を向ける。
太陽がさっきより随分傾いていた。
タイムリミットまであと僅か。
元の時代に戻る前にもう一度この時代のサスケに会いたい。
「礼を言わないとな」
泊めて貰ったし、食事まで世話になった。
今、何をしているだろう?
「サスケ」
元の時代のサスケは?
この時代の俺に会っているのだろうか?
ナルトはハアッと息を吐いて背伸びをした。
暇だからいろいろ考えてしまうのだ。
「本気で縄抜けの修行でもすっかな」
サスケが置いていった巻物を手に取った。
その時――――。
唐突に扉が開かれる。
背中を預けていたナルトはそのまま前につんのめった。
「あれ、ナルト。そんな所で何してんのよ」
聞き覚えのあるその声にナルトは驚いて顔を向けた。
桜色の長い髪をかき上げて、大人の女性になった幼馴染が驚きに目を丸くするナルトにクスッと笑みを浮べた。
「そろそろお腹が空いたんじゃないかと思って。はい、三時のおやつよ」
サクラはそう言って白いお皿の上に乗せられた柏餅を差し出して扉を閉める。
「あ、サクラちゃん?」
「ん?どうかした?」
「え、だって扉」
扉を閉めたサクラはそのまま居座るかのようにナルトの隣に腰を下ろした。
「良いのよ。サスケくんが来てくれたおかげで私の手が空いたし、ちょっと相手してろって頼まれたしね」
そう言うとサクラは皿から柏餅を一つつまみ、ナルトに渡した。
「あ、ありがとうだってばよ」
「暇だったでしょ。あんた待ってるのって苦手だし」
サクラは昔と変わらない笑顔でそう言って、自分も柏餅に噛り付いた。
サクラ色の髪や背丈はナルトのしる十年前のサクラとそう変わらない。だが薄く引かれた紅と良い薄化粧が随分彼女の印象を変えていた。
本当に大人の女の人だ。
ぼんやりと見つめていると、サクラが「馬鹿」と呟いて頬を赤く染めた。
「そんなにジロジロ見ないでよ」
「サクラちゃん綺麗になったってばよ」
「ふふ。ありがとう。あんたは……なんか懐かしいわ」
サクラはそう呟くと目を細めた。
「なあ、なあ、俺も変わった?格好良くなったってばよ」
サスケはとても背が伸びていた。筋肉のつき方も自分の知るサスケとは違う大人の男に成長していた。
自分は?自分はどんな風に成長したのだろうか?
一番、気になる。
「んー。心配しなくも背は伸びたわね。サスケくんが静かに悔しがってたもの」
「本当だってばよ!」
それは嬉しい。
昔から身長で負けていることが一番悔しかったのだ。
「ど、どんくらい?」
1cm?2cm?それともうーんと差をつけて10cmとか。
「そうね。こないだの健康診断で5cmって言ってたわよ。喜んでこの屋敷の外周一周して叫んでたから」
「うっ」
外周一周?叫びながら?
それは恥ずかしい。
だけどやりそうだと思う。
それくらいサスケに身長で勝ったというのは嬉しいのだ。
術や力は修行で伸ばすことができるが背丈だけはそういうわけにはいかないのだから。
「へへへ。サクラちゃんありがとう」
明日への活力を貰った気がして、ナルトはウンッと拳に力を入れた。
十年後、背を抜くその時までに、術も力も抜いてやる。
その前に中忍試験だな。
よし、やるぞ!とナルトは床に置きっぱなしになっていた『縄抜けの術』の巻物に手を掛けた。
刹那――――。
「あー、いたいた」
再び扉が開かれる。
「あ、綱手様」
そこには昔と変わらない姿の綱手が立っていた。
「おお。本当にいるじゃないか。でもどうせならもっとちんまい時のだったら可愛くて良かったのにな」
綱手はクスクスと笑いながらナルトの頭をポンポンと叩いた。
「な、何だよ!」
完全に子ども扱いされて、ナルトが真っ赤な顔でその手を振り払った。
「綱手様、何しに来たんです?」
「ああ。そろそろ来客も帰ってサスケの用事も終りそうだったからな。ナルトの事を呼びに来てやったんだよ。ほら、ついといで」
綱手はそう言うと有無を言わさずナルトの腕を掴み上げる。
「ばあちゃん、痛てえって」
「つべこべ言うんじゃないよ。ほら行くよ」
そのまま、スタスタと歩き出す。
サクラは仕方ないわね、と肩を上げて二人の後を追い掛けた。
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