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すぐに裏切れる。 嘘をつくのなんて簡単だ。 だから指きりげんまん―――。 「カミーユさん、何やってるの?」 Zのコックピットに座り、PDAのA4モニターの画面をぼんやりと見つめていたカミーユは掛けられた 驚いた眼差しを覗き込んでいる彼に向ける。 彼――ジュドーは笑って「ん?」と声を漏らした。 「何って……」 別に、と口ごもる。 目の前には数字が羅列された資料が表示されている。だが、カミーユはその資料を読んではいなかっ 考えていたことは他にあって……。 カミーユは真っ直ぐに自分を見つめる緑の瞳を避けるように視線を伏せた。 「地上での燃料の計算の確認を……」 はぐらかすようにそう言えばジュドーは画面を覗き込みウヘェと舌を出す。 「カミーユさんってば真面目なんだから」 「お前が不真面目なだけだろ」 カミーユはそう言ってただ何となく開いていただけの画面を閉じた。 そういえば、何時から彼はそこにいたのだろう。 ハッチを開きっぱなしにしていたから、カミーユがいるのを知って上がって来たのだろう。 それにしても作業台が上昇してくるのに全く気がつかないとは……。 カミーユは思考に没頭してしまった自分に小さくため息を漏らした。 つい夢中になってしまうと、周りが見えなくなってしまうのは自分の悪い癖だと思う。 「もう良いの?」 コックピットから出て、作業台に移ったカミーユにジュドーが尋ねる。 「ああ」 本当にただの暇つぶし。 「ほら、行くぞ」 そう言って、カミーユは作業台のコントローラーを操作し降下させた。 敵がなりを潜めている為、今のところ急くような仕事もなく、デッキには数人のメカニックがいるだけだっ 閑散としているデッキをジュドーを連れて横切る。 「あ、そうだ。ねえ、カミーユさん」 自分の後ろを犬のようについて歩いていたジュドーが不意に何かを思い出したように声を上げる。 「指きりの歌って知ってる?」 「はあ?」 突然何を?とカミーユは足を止め振り返る。 思いっきり眉を寄せ、訝しげな視線をジュドーに向ける。 「だから指きりの歌」 「ああ。指きりげんまん〜ってやつだろ」 「そうそう、それ。それってさ、怖いよね〜」 頭の上に腕を組んだ格好でニッと笑ってそう言う。 カミーユは意味が分からず首を傾けた。 子供の頃、約束する際に良く歌っていた童謡だ。 特に意味なんてないと思っていたが……。 「怖い?」 「そう。今日さ、プルに約束だから指きりしよって言われてさ。歌聴いてたらなんかすげえ怖いなって思っ 「そうか?」 確かに「針千本飲ます〜」とか歌詞にあるが……。 「で、それがどうしたっていうんだ?」 ジュドーの話には脈絡がなさ過ぎる。 どうして今、その指きりげんまんの歌の話になるのか?カミーユはさっぱり分からず顔を顰めた。 「別に。ただ何となく思い出しただけ」 「何だ、それ?」 「んー、でもカミーユさんとなら指きりしたって良いかなって思ってさ」 「はあ?」 何の約束だ、とカミーユは声を上げる。 ジュドーと約束するようなことは何もない。 指きりの歌が怖いって聞いた後では尚更だ? 訝しげな顔でカミーユはジュドーを見つめた。 時々、思う。 ジュドーの考えていることが良く分からない。 「ジュドー?」 もっと順序だてて話を……と口にしようとした瞬間、ジュドーがカミーユの腕を掴んで引っ張った。 「お、おい」 そのまま格納庫の奥へと引っ張って行かれ物陰に体を押し込められる。 「ジュー」 非難の声を上げようとした瞬間、ジュドーが人差し指を立てて「しっ」と黙るように促した。 その顔はまるで悪戯を思いついた子供のようにキラキラと輝いている。 何が何だか分からないまま、カミーユは言葉を飲み込んだ。 (何なんだ、一体?) 頭の中はクエスチョンマークでいっぱいである。 そもそも何故、自分は隠れなくなくてはいけないのか? (そうだ、隠れる必要なんて……) そう思った時、向こうからこちらに向かってくる足音が聞こえた。 (この気配……) 良く知る気配を感じ、カミーユはハッと顔を上げた。 「この辺りにいたと思うのだが」 良く通る低音の声が先ほど二人のいた場所あたりから聞こえてくる。 「二人ともどこに言ったんだ?」 少し高めの声がそれに続いた。 珍しく両大尉が揃ってジュドーとカミーユを探しているらしい。 何か重大なことでもあったのか?と身を乗り出しかけたカミーユをジュドーが抱きしめた。 『おい』 声を潜め、縋りつくように自分を抱きしめる年下の少年に声を掛ける。 『大丈夫だって』 『何かあったのかもしれないだろ』 大きな声を出しても構わないのに、何故か声を潜めてしまう。 面白がってクスクスと笑みを浮かべている横っ面を抓るとジュドーが「てっ」と声を上げた。 その声に二人の大尉は顔を格納庫の方へ向ける。 気づかれたと思った時には直ぐ傍に二人の大尉の姿があった。 両大尉は狭い所で抱き合っている二人に眉を寄せる。 「べ、別に俺は何も……」 カミーユは慌ててジュドーの体を引き剥がし答えた。 「大尉達が来るのが分かったから隠れてただけだって」 ジュドーは悪びれもせずにそう答える。 カミーユはそんなジュドーの足をフンと踏みつけた。 ジュドーが痛みに飛び上がる。 二人にやりとりにアムロが楽しそうに笑みを零す。一方、クワトロは苦味を噛み潰したような表情を浮か 「仲が良いのも良いことだが……」 「まあ、まあ、シャア。カミーユ、もう作業は終ったのかい?」 「え?」 アムロの言葉にカミーユは目を見開く。 「Zのコックピットにいただろ?俺もさっきまで?ガンダムにいたからな。まあ、俺の場合は休んでただけだ あそこが一番落ち着くんだ、と言ってアムロは笑う。 アムロの言葉にカミーユは頷いた。 カミーユも考え事をする時はあそこが一番落ち着くのだ。 一人になれるのだったら自室だって同じなのに……。 「そうなんですよね!」 嬉しそうに声を上げるカミーユにジュドーは唇を尖らせた。 「で、何のようなのさ」 ふて腐れたうような物言いにカミーユはピクンと眉を上げ、ジュドーをキッと睨みつける。 「お前、アムロさんにそんな口っ!」 「良いの!で、用件は何?敵とかじゃないんでしょ?」 今の所、非常警報は鳴っていない。デッキは静かなものである。 アムロとクワトロ。 この艦のパイロットの中でも別格である二人が揃ってジュドーとカミーユを探す理由。 「確かに、何なんです?」 カミーユが問えばアムロは困ったような表情を浮かべチラリと横に立つ長身の男に視線を向けた。 クワトロはアムロの視線に頷く。掛けていたサングラスを指で押し上げるとジュドーに体を向けた。 「確か、君はカミーユを呼びに来たのではなかったのか?」 「えっ。あ、それは……」 クワとロの言葉にジュドーが体を丸め言葉を飲み込む。 「中々、来ないものでね。アムロを呼びに来たついでに探しに来たのだよ」 「あんたがわざわざ?」 「いけないかね?」 「……いえ。すみません」 鋭いクワとロの眼差しに普段物怖じしないジュドーがシュンとうな垂れ体を丸くする。 「俺に用事ですか?」 カミーユはそんなジュドーを無視してクワトロに尋ねた。 わざわざクワトロが呼びに来るくらいだ。深刻な用事かと思い尋ねたのだが、返って来たのは意外な返 「いや、別に。たいした用事ではない。差し入れがあったのでね。食堂に集まってお茶をし 「は?」 今、聞いた言葉が理解できずカミーユは目を丸くした。 そんな事、と言ったら失礼だが、本当にたいした用事ではない。 別に自分がいなくなって問題はないだろうに……。 「俺達は先に行ってるから」 アムロはそう言うとクワトロの腕を掴む。 「早くおいで」 |