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僕の隣に君がいる
01.
確かに天気予報では夜中過ぎから「雨」になるだろうと言っていた。
しかし「嵐」になるとは言っていなかった。
夜半過ぎ――――眠りについていたナルトは大きな音に目を開いた。
あれは……ガラスの割れる音。
そして今、目の前に無数のガラスの破片が降りかかってこようとしている。これは?と思いナルトはすぐさまそこから身を動かしガラスの破片を回避すると素早く苦無を握り身構えた。
だがどうやら敵襲ではないようだ。
しばらく警戒し割れた窓を睨みつけていたが敵らしきものは現れない。
そもそも自分のような下忍に夜襲を掛けるものがいるかどうかは別だが。
敵は風。そんでもって共犯は激しい雨。
ベッドのすぐ隣の窓が割れている。犯人は激しい風にどこからか飛ばされた拳くらいの大きさの石のようだった。それが思いっきりブチ当たり窓を豪快に割ってくれたのだ。そこから冷たい水しぶきが威勢よく部屋に飛び込んできて――――――。
ナルトは大きな目を見開いて先ほどまで自分のいた場所を呆然と見つめていた。
ガラスの破片が散らばっている上、水浸しになったベッドはもう一度眠れるような状態ではなかった。
「うーん。どうすんべ」
応急処置をしようにも板も釘もない。
しかしこのままでは眠ることもできないし……まあ、応急処置をした所で今夜このベッドで眠ることは難しいだろうし……。
「うーん。うーん」
それどころか風が吹き込んできてとても寒い。これじゃとても朝まで部屋にいることは出来ない。とはいえ……と考えてナルトは落ち込んだ。
行くところなんてどこにもない。
カカシ先生の家なんて知らないし、サクラちゃんは優しいから事情を言えば泊めてくれるだろうけど、家族がいるから良い顔はしないだろう。
不幸なことにイルカ先生は昨日の朝から任務に出ていて戻るのは明後日の朝だった。
最後に浮かんだ顔にナルトは顔を歪める。
確かにあいつん家なら誰も家族はいない。
ああ見えて結構優しいヤツだから事情を話せば泊めてくれるだろう。
でもなんか弱みを見せるようで嫌だ。
ムウッとナルトは唇を歪める。
外は激しい雨と風。避難するのも一苦労だろう。
「だけどこのままこうしてても凍死しちまうってばよ」
ガタガタと体が震えだす。
背に腹は変えられない。
そう思うとナルトは決意して気休めにしかならないであろう傘を手に部屋を出た。
当然のことだが、眠りについていたサスケは扉を叩く音に眉間に皴を寄せながら起き上がった。
「誰だ?」
と低い声で扉の向こうの誰かに問いかける。
外は激しい雨と風であろうことは音で分かる。こんな天気のこんな夜中に一体誰が?
もちろん心当たりはない。
里に在籍している忍としてどんな時間でも任務で召集が掛かることはある。だが中々返答がこない所をみると伝令や何かではないようだ。
だが気配を消してはいるが「誰か」が部屋の前にいる。
もう一度「何者だ」と低い声で問いかけると、聞き覚えのある声がオズオズとした口調で「俺…」とだけ答えた。
サスケの眉間に更に深い皴が刻まれる。
ため息をつきつつゆっくりと扉を開くと濡れねずみなったナルトがうな垂れて立っていた。
「お前、傘ぐらい持ってないのか」
そう言うとナルトが傘の残骸を差し出す。
「途中で風にやられた」
しょんぼりと肩を落とすナルトにサスケは頭を掻きながら息を吐いた。
「とりあえず入れ。このウスラトンカチ」
流石にこのまま追い返すわけにも行かずそう言うとナルトの顔がパッと明るくなる。
全く忍びとは思えないくらい分かりやすい奴だ。サスケはそう思いながらとりあえずナルトの袖を引っ張って風呂に放り込んだ。
サイズは自分と同じで大丈夫だろう。
ナルトがシャワーを浴びている間にサスケは着替えを用意してやる。
全くとんだ夜だと愚痴ながら着替えを置いてやる。
「オウ、サンキュウ!」
浴室から明るいナルトの声。
さっきまで随分しょんぼりとしていたくせに全く単純な奴だとサスケは思いながら部屋に戻り熱いお茶を用意してやった。
「おー、温まったぜ!」
ナルトがご機嫌で部屋に戻ってくる。
お茶を見つけて顔を綻ばせた。
「気が利くぜ」
それからフウフウと何度も息を吹きかけてからお茶を口に含む。
スリーマンセルを組むようになってから知ったのだが、あんなにラーメンばかり食べているくせにナルトはかなりの猫舌だった。
「で、こんな夜中に突然何のようだ」
サスケがそう切り出すとナルトは眉間に皴を寄せた。
「それがってばよ……」
眠っていたら突然風に煽られた石に窓を割られて、ベッドも部屋も水浸しでとてもいられる状態ではなくなってしまったのだと、うな垂れて説明する。
「それであんまり寒いもんでさ避難させてもらおうと思ったんだんだけどさ、カカシ先生んちは知らないし、イルカ先生は任務に行ってるし、他んヤツとこには家族がいるし」
「まあ、確かに俺の所には家族がいないからな」
それでも自分を頼ってくるのが意外でそう言うと、ナルトは心底困った顔で「うん。だからよ。他に頼るとこがなくてさ」と呟いた。
顔に不安の色が見える。
不安と孤独と心細さ。
その気持ちは本当に一人になったことのあるものにしか分からない。
「仕方ねえ・・・な」
聞いてしまった以上放り出すこともできずサスケは頭を掻いた。
「今夜は泊めてやるが暴れたら追い出すからな」
そう言ってサスケは布団に入ると「ほらよ」と布団の端を持ち上げた。
「へ?」
「仕方ねえだろ。うちには客用の布団なんかないからな」
「で、でも一緒にって」
「嫌なら別に良い」
サスケは背を向けると頭から深く布団を被ってしまった。
「い、嫌じゃねえってばよ。ちょと意外だっただけでさ……」
だけど確かに自分の家にも自分の布団以外ないのだから、サスケの家に客用の布団がないのは当たり前だと思う。
それにサスケのベットは大きいから二人で眠っても全然窮屈じゃない。
ナルトはニッと笑うとサスケの隣に潜り込んだ。
さっきまで凍え死にそうなくらい寒かったが嘘みたいだと思うくらい布団の中は温かかった。
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