「で、どうするんだ?」
パンの最後の一片を口に放り込んで瞬間言われたサスケの言葉にナルトは「へっ」と声を漏らす。
「部屋、何とかしなくちゃなんねえんだろ」
確かに昨夜は突然の出来事に驚いた上、寒くて頭が回らなくてサスケの家に押しかけてしまったが……。
「そうだよな〜あの部屋……」
部屋の形相を思い出しナルトが肩を落とす。
今日は幸い任務もない。
雨は降っているが、昨夜のような嵐ではないし、部屋をあのままにしておくわけにはいかないだろう。
それは分かっているのだが……正直、悲惨な状態になっているであろう部屋に戻るのが怖い。想像しただけで気分がズンっと落ち込んでくる。
「とりあえず、工具を借りてこないとな。それから板を買ってきて窓は塞いでおくか」
そんなナルトを尻目にサスケが冷静に今後の行動を思案する。それをナルトはただただ感心して聞いていた。
やっぱりこういう所がすごい。
いつも自分が混乱している時でも冷静な判断を下し、行動を示唆してくれる。
本人には悔しいから絶対に言わないけど、やっぱり頼りなるヤツだってばよ〜とナルトは心の中で思った。
食事の片付けが終ってすぐ二人はサスケの家を出た。
効率を考えて二手に分かれることする。
ナルトはとりあえず窓を塞ぐ為の板を買いに行き、ガラス屋に立ち寄って修理を依頼する。その間にサスケが必要な工具を調達し、ナルトの家の前で待ち合わせすることにした。
それにしても……ナルトは両手いっぱいに板を抱えて家に帰る道を歩きながら思う。
なんだかんだ言ってもサスケは面倒見が良い。
昨夜だって泊めてくれたし、朝食も作ってくれて、折角の休みだっていうのにこうして付き合ってくれている。
「へへへ」
何だか嬉しくて思わず笑みが零れた。
ずっと何があっても一人で乗り越えなくちゃいけなかったから、結構キツかったこともある。
こうして困った時に助けてくれる人が自分にもできるなんて、ほんの少し前までは想像もできなかった。
「うわー、すげってばよ」
風と雨に荒らされた部屋は想像通り悲惨だった。
「とりあえず片付けちまうぞ」
サスケがレインコートを羽織りながら言う。
まずは窓を板で塞ぐ。
「それが終ったら部屋の片付けと掃除だな」
「おう」
だけど雨が止まないことには布団は干せない。
(まだここで寝るのは厳しいってばよ……)
ナルトはチラリとサスケを見た。
サスケは工具箱から釘と金槌を取り出している所だった。ナルトの視線に気づき顔を上げる。
「何だ?」
「え、いや、何でもないってばよ」
(でも流石に二日も泊めてくれとは言いにくいよな〜)
ナルトは苦笑いを浮かべながら頭を掻いた。
ひと段落ついた頃には昼はとっく過ぎ、夕方に近い時間になっていた。
「疲れたってばよ」
それに腹もへった。二人とも作業に没頭していたから昼食をとるのをすっかり忘れていたのだ。
クルクルと音を立てる腹をさすりながら、ナルトは床にヘタりこんだ。
サスケの腹もなっている。
二人は顔を見合わせた。
「少し休憩したら帰るか」
「え?」
「まだここじゃ寝られねえだろ」
確かに布団はビショビショのままだが、部屋はおかげさまで綺麗になった。
(床に寝ろとか言われると思ったのに)
思いがけないサスケの優しさにナルトは胸が熱くなった。
何かがこみ上げてきて、ナルトは慌ててサスケに背を向ける。
今まであまり人に優しくされたことがないから、単純に向けられる好意に弱いんだとナルトは思った。
「ん、じゃあ帰る前に茶でも飲もうぜ。俺、煎れてくるってばよ」
「おい」
「ちょっと待ってろよ!」
目の傍を手の甲で擦る。それからサスケの方を振り返えるとナルトはニッと笑った。
夜中にふと目が覚める。
見慣れない天井に「ああ、サスケんちだ」とナルトは思った。
結局、もう一晩泊まることになった。
明日にはガラス屋も来てくれるし、天気も回復するみたいだから、布団も乾くかもしれない。
(何か俺ってば…)
家に帰れるのに……ちょっと寂しいなんて思っている。
背中越しに感じる温もり。
サスケの寝息。
(変だってばよ)
隣にサスケがいることが嬉しいなんて絶対変だとナルトは思いながら瞳を閉じた。
翌日、ようやく空に太陽が戻った。
明るい日差し。これで布団が干せる。
夕方までには窓にガラスも入るし一安心。
飛び出してきたから荷物もないし身軽なものだ。
「本当に助かったってばよ!」
この二日間、サスケにはいろいろと世話になってしまった。
サスケが居なかったらどうなっていたかと思うと想像したくない。寒くて身も心も凍ってしまいそうだったから。
ナルトの言葉にサスケは少し頬を赤らめて、顔を背けると「別に。いつものことだからな」と言った。
「いつもって何だよ。すっげーお前にいつも迷惑かけてるみたいじゃん」
「違うのか?」
「絶対違う」
いつもそんなに迷惑なんてかけていない……ハズだ。
「今度は俺んちに招待してやるよ」
ご飯ぐらい作ってやると言うとサスケは苦笑いと浮かべた。
「お前料理できるの?」
「あったり前じゃん。俺ってば何年一人暮らししてると思ってるってばよ。俺の作るラーメンはピカイチだぜ」
「って、ラーメンかよ。それって料理なのか?」
「おうよ!」
ナルトはそう言って自信満々に胸をドンと叩いた。
フッとサスケの口の端が上がる。
次の瞬間、ナルトの鼓動がドクンと跳ね上がった。
サスケが笑ったからだ。
それがとても綺麗で――――。
(何だ…)
思わずナルトは胸を押さえた。
形の良いサスケの唇が言葉を紡ぐ。
「断る」
サスケはそう言うとパタンと玄関の扉を閉めた。
閉ざされた扉見つめながら、ナルトは頬を染めて「可愛くねえってばよ」と呟いた。
−END−
初ナルサスです。SSのつもりだったんですが…SSの長さではない…ですね。
可愛いナルサスを目指して撃沈。「恋の始まり」ということで、ちょっと「意識し始めた
二人」って
いう雰囲気で読んで頂けると嬉しいです。
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