PAN2-2



 うちはサスケは悩んでいた。
 7月の自分の誕生日、ナルトはプレゼントをくれた。
 それはベビーピンクにハート柄のトランクスいう頭を疑いたくなるようなものであったが……。
 プレゼントには違いない。
それを巡って死闘を演じ、周辺住民の通報で駆けつけた警務隊に怯えられ、呼び出されたサクラにこっ酷く詰られたとしてもとしても。それがナルトからの誕生日プレゼントだと事実は変わらないのだ。
現在、そのパンツはサスケのタンスで眠っている。
 別に勝負に負けたからではない。
 サクラに履く、履かないはともかく貰っておけと脅されたせいでもない。
 捨てると言うナルトに「絶対に履かないからな!」と断ってそれ受け取ったのには理由がある。サスケにプレゼントを贈りたいというナルトの気持ちが嬉しかったからだ。
 もちろんサスケがあのトランクスを着用することはなかったが……。
 執務室の自分の机でハアッとサスケはため息を零した。
 目の前には白紙の書類が広がっている。
 ナルトは来客があり、席を外していた。
 別に補佐官が二人揃ってつかなくても良いだろうと、今日のお供はサクラが担当している。
 一人残った執務室でサスケは頭を悩ませていた。
 あれから3ヶ月近く経ち―――――明日はナルトの誕生日である。
 その日は慰霊祭ということもあり、里を上げて彼の誕生を祝うことはこの先も一生ないだろう。だからこそ自分だけでも祝ってやらなければと思う。
 産まれてきてくれてありがとう、と―――――――。
 しかし、問題はプレゼントだ。
 この所、業務が忙しく買いに行く時間などなかった。
 気がついたら誕生日は明日なのだ。
 どうしたものか?と頭を悩ませる。
 何にしようか……。
 刹那、サスケの頭の中にあのピンクのパンツがチラついた。
「いや…だが……」
 あの事件の後、サスケは知ったのだが、ナルトのパンツのセンスは中々スゴイ。先日、家に行った際、ヤツのコレクションを見せて貰ったが、富士が描かれたものから、可愛いファンンシーなくまが描かれているものまで、様々な色とりどりの柄ものパンツが並んでいた。シンプルなものを好むサスケには全く理解できない。
 だが、聞けば忍は結構パンツでおしゃれを楽しむ者が多いらしい。
 確かに服はいつも忍服だし、おしゃれできるところといえばパンツぐらいかもしれないが……。
 やっぱり理解できないと肩を落とす。
 いや、理解したくもないが……。
 と、その時、扉に気配を感じサスケは顔を上げた。

「あれ、サスケくん。一人?」
 現在、暗部の部隊長を務めているサイだが、今日は普通の上忍服で現れた。
「そういや、今日は大名が明日の打ち合わせに来てるんだっけ」
「ああ。伝言なら伝えておくが」
 サスケはそっけなくそう言って、席も立たず、手元の書類に視線を向けた。
 どうもこいつとはウマが合わない。サイの言葉はイチイチ癪に障る。自分がいない間、苦楽を共にしたサイとナルトの仲が良いのもムカつく。
 だがサイは露骨なサスケの態度を楽しんでいる様子で、いつもサクラが座っている席に腰掛けた。
「何だ?」
 顔も向けず問いかける。
 サイは特に気にした様子もなく話し出した。
「んー。明日はナルトの誕生日でしょ」
「そうだな」
 ピクとサスケは眉を上げる。
「でさ、プレゼントってもう用意した?」
 つい先程までそのことで悩んでいたサスケは思わず顔を上げ、サイに視線を向けた。
 サイが不敵に笑う。
「僕、ナルトの欲しいもの知ってるよ」
「何が目的だ」
 こういう顔をする時のコイツは要注意だとサスケは警戒しつつサイの言葉を待った。
 するとサイは心外とばかりに顔を歪めた。
「嫌だな、僕とサスケ君の仲じゃないか」
 どんな仲だ!お前となんか親しくなった覚えはない!と言ってやりたがったがサスケはグッと耐えた。
 サイの考えが分からない以上、こちらも隙を与えないようにしなければと思う。
「単に困っている友人を助けたいだけだよ」
 それは単に困っている友人を面白がって観察したいだけなのでは?
「まあ、良い…」
 確かに困っているのも事実だ。
 そして今のサスケには明日に迫った慰霊祭の準備に追われプレゼントを買いに行く余裕もない。
「で、買ってきてくれるのか?」
「もちろん!」
 サイは胡散臭い笑みを浮かべそう答えると、サスケに右手を突き出した。



 あいつに頼んだのが間違いだった!
 慰霊祭が終わり、大名達を労う宴が終わったのはもう日付が変わるまで後何分もない時間だった。
 早く、渡さなければ意味がない。
 一旦、執務室に戻ったサスケは焦っていた。
 夜、遅い時間だが、先ほど帰宅したばかりのナルトはまだ眠っていないはずだ。
 問題はプレゼントだ。
 祭典の途中、サイがサスケに執務室の机の上に置いておいたと言っていた。
 それで慌ててナルトを火影邸に送り、自分はこっちに戻ってきたのだ。
 別れる時のナルトの寂しそうな顔が忘れられない。
 
「帰えるのか?」と聞かれ「忘れ物をしたので執務室からとって来ます」と答えた。
 それから「少しだけこちらにお邪魔しても良いですか?」と尋ねるとナルトの顔がパアっと明るくなった。
「うん、絶対、寝ないで待ってるってばよ」
疲れて本当は眠くて仕方ないクセに。宴の最中、何度も眠そうに目を擦っていたのを知っている。
慰霊祭はナルトにとっていろんな意味で特別だ。
子供の頃は参加させて貰うことはできなかった。参加すれば命を失うことになると脅されたこともあるらしい。
 その祭を自分の手で行うことへプレッシャーと胸の痛みに苛まれ、この所ナルトがあまり眠れていないのをサスケは知っている。
 この日悲しく散った人々を殺めたのは自分の腹にいる九尾なのだから。
 だが、今日はナルトが産まれた嬉しい日でもある。
 決して罪の意識に囚われて今日を終わらせて欲しくない。
 サスケは灯もつけず、包みを手にすると、すぐさま火影邸へ踵を返した。



 扉をノックする前にナルトが飛び出してくる。
「サスケ!」
 待っていた、というナルトはTシャツにスラックスという軽装だった。
「悪かったな、遅くなって」
 二人きりの時は敬語ではなく、いつもの口調で話す。
「だが、間に合っただろ?」
 そう言ってサスケはチラリと時計を確認した。
 ナルトも視線を時計に向ける。
「ほら」
 サスケは包み紙をナルトに渡した。
「サスケ…」
 見開く青い瞳見ていると顔が熱くなり、サスケは思わず顔を背けた。
「サンキュ!開けて良い?」
 ナルトの言葉に頷く。
 頷いてから……サスケはハッとした。
 そういえば、あの包みの中身は何だったんだ?
 時間がなくて確認してこなかった。
 あの包み紙にはどことなく見覚えがあったが……何処で?と頭を巡らせて、サスケの顔からサアッと血の気が引いた。
 あれは、小さな紙袋は……。
「ちょっと待て、ナルト!」
 そう叫んだ時には時、既に遅しで、ナルトは包みからそれを取り出し眺めていた。
「これ…」
 な、何だ、それはとサスケは絶句する。
 サスケが貰ったものよりえげつない。
 黄緑色のトランクスの後一面にデカデカとプリントされた蛙にサスケは言葉が出なかった。
 前には波と「蝦蟇親分」の文字。
 まるでナルトが口寄せする大蝦蟇をデザインしたようなパンツをサスケは無言で見つめた。
「ナルト…気にいらないなら…返しても…」
 …っていうか返すのも恥かしい。むしろ捨てたい。
 するとナルトは「何言ってるんだってばよ!」とそのトランクスを胸に抱き締めた。気のせいかナルトの瞳がキラキラ輝いている。
「俺、これずっと欲しかったんだってばよ!サンキュ!サスケ!」
「え…ああ…」
 欲しかった?これが?
 サスケは目を見開きポカンと口を開いた。
「明日、早速履かせて貰うってばよ」
 いや、それはやめろと言いたかったが、嬉しそうにしているナルトに何も言えなかった。
(今回は喧嘩にならなかっただけマシか……)
 サスケはナルトの後ろ姿にため息を漏らす。
 時刻は12時を過ぎ、次の日を迎えようとしていた。



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ナルト誕生日SSです。でも誕生日当日のことは殆ど書いてない(笑)
サスケ編は大喧嘩で終わったので今回は可愛くまとめてみました。
このパンツネタ。また書きたいです!
忍の里は柄パンが大流行って(笑)