いつも元気すぎるくらい元気なナルトが今日はいつになく思いつめた表情で、何度もため息を零しているのを見かねてサイは尋ねた。
「どうかしたの?」
今、執務室には自分とナルトしかいない。
サクラが重病人が出たとかで木の葉病院に借り出されており、サスケは使いに出ている。
丁度、任務を追え、報告に来たサイはナルトのどんよりとした表情に驚いた。
「そういや、昨日の夜…」
「もう、そのことについては触れるなってばよ」
ナルトはガバッと頭を抱えて机に突っ伏した。
もう思い出したくないといった素振りにサイは小さく笑う。
昨夜、火影邸で一騒動あったことは任務に出ていたサイも知っている。なんでも痴話喧嘩で警備隊が呼ばれ、周辺住民を恐怖に陥れたとか。火影邸は無残にも半壊し、今、サスケが大工との修理の打ち合わせに回っていると先ほどナルトが呟いていた。
しかし綱手やサクラにこっぴどく叱られても、ナルトはいつまでも引き摺っているタイプではない。
ハアッとまたため息つく。
ナルトが目を細め、遠くを見つめている時は大抵、彼のことを考えている時だ。
「昨日はサスケ君の誕生日だったんでしょ。喧嘩の原因はなんなんだい?」
サイが尋ねると、ナルトは大きく見開く。
どうしてサイが自分たちの喧嘩のことを知っているのか?
「そりゃ、あれだけ騒ぎになれば里にいる者なら誰だって知ってるって」
「そうか」
確かに喧嘩が発展して警務隊を呼ぶほど大事になってしまったのだ。皆知っていて当然だろう。
それにサイにはプレゼントを上げることを言ってあったし……。しかしサイに相談すべきかどうか、ナルトは考え込むように右手の親指を下唇に押し当てた。
「プレゼントはあげたんだろ?」
「もちろんだってばよ!」
サスケの性格を考えて実用的なものを選んだつもりだ。喜んでもらえると思ったのに何が悪かったのだろう。
ペアルックか?
「パンツくらいペアでも良いって思うだろ?恋人なんだからさ!」
ナルトはサイの肩をガシッと掴み、ブンブンと揺すりながらそう言って、口を尖らせる。
「へえ、パンツをあげたんだ?」
「おうよ!それも可愛いのだぜ」
自信満々にそう言うナルトにサイは苦笑いを浮かべた。一緒の班だった時代、一緒に風呂に入る機会も多かった。それ故、サイはナルトのセンスを熟知していた。
ナルトチョイスのパンツ。
それはサスケにはキツかろう。どういう柄かは知らないが、何となく想像できる。
ナルトが贈ったパンツを手に震えているサスケの姿を想像してサイは吹き出しそうになってしまった。
全く、このバカップルは飽きなくて良い。
(ちょっと苛めたくなるよね)
サイは心の中でそう呟いてブウ垂れているナルトの頭を小さい子をあやすようにサイは優しく撫でてやった。
「なのにサスケは細かすぎなんだよ」
「うん、うん。まあ、そこは否定しないけど。でもね…」
「何だよ」
サイの言葉にナルトはますます拗ねたように口を尖らせる。
「でもさ、ほらセンスは人それぞれだからね。もっと違うのが良かったとか」
そう言われて、キョトンと目を見開いた。
「でも確かトランクス派だぜ」
恋人なんだから、そのくらい知っている。
だからブリーフではなく、トランクスにしたのだ。
「それがいけないんじゃない?」
「どういうことだよ?」
ナルトが尋ねるとサイはにっこりと笑顔を浮かべた。
そしてナルトの耳元に唇を寄せた。
「なっ!」
衝撃的なサイの言葉にナルトは思わず声を上げた。
「そ、そんな」
「でも、たまにはそういうのも良いんじゃない」
サイはそういうとうそ臭い笑みを浮かべた。
「で、でもっ、でもっ」
「でも?ナルトだって見たいでしょ?」
確かに見たい。
ナルトはサイの言った格好をしているサスケの姿を想像してゴクンと唾を飲み込んだ。
「でも、そんなもん渡したら、あれくらいの騒ぎじゃ……」
「でも案外ノッてくれるかもよ。それに最近、暗部では結構ハヤりらしいし」
「え、そうなのか?」
その言葉にナルトはギョとして目を見開いた。
だが、口から出まかせではなく、昔から忍びの間でこのパンツ、意外に動き易いと評判が良いのだ。
「やっぱり黒のTバックでしょ」
「Tバック」
「調節できるようにサイドは紐にしてみるとか」
「ひ、紐っ!」
ナルトの顔が熟れたトマトのように真っ赤に染まった。金魚のようにパクパクと口を開閉させている。
「夜のムード作りにも良いんじゃない」
サイはそんなナルトの耳元に唇を寄せて、そう呟いた。
「紐、Tバック」
バクバクと想像して高鳴る心臓を抑えようとナルトは胸をギュッと押さえる。
そんなナルトを労わるように、肩にポンと手を置いたその時―――――――――――。
「て、てめえ!何を吹き込んでやがる!」
そう叫んで、二人の背後で怒りのチャクラを燃やし、拳を握り締めているサスケにサイは苦笑いを浮かべた。
「ちょっとね」
「てめえ!」
「ち、違うんだ。サスケ!俺は!」
ナルトが慌てて二人の間に入る。
昨日に引き続き、今日も喧嘩はマズイ。サスケの立場を悪くする。
「黒のTバック。まだマシでしょ?」
「マシなわけあるか!」
だがサイの言葉にサスケの怒りは沸点間近まで上がっていく。
「じゃあ、どんなパンツが良いんだよ」
我侭だ、とさもサスケが悪いように抗議するナルトに、サスケの中で何かがプツンと音を立てて切れた。
「全く人のいない間に」
片目に派手な紫色の大車輪を浮かべたサイとナルトに戻ってきたサクラは苦笑いを浮かべる。
サスケは既に机に向かい書類整理を始めている。
「で、何があったの?」
「え、それは…たいしたことないってばよ!」
最後の仕上げに鼻の頭に絆創膏を貼ってもらいながらナルトは苦笑いを浮かべた。
昨日も今日も、二日連続で喧嘩の原因がパンツだとは非常に言いづらい。
(まあ、Tバックはないだろうって俺だって思ってたけどさ)
ナルトは深いため息を浮かべた。
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PAN2-1.5です。実はあと二本くらいネタがあります。
温泉でパンツの見せ合いっこだとか、酔った勢いでパンツのことで絡むナルトとか。
このネタは書いててすごく楽しいです。