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ズッコケ漫才道
02.
鳴り響く拍手と歓声にサスケはハッと我に返った。
(終ったのか?)
正直、無我夢中でほとんど憶えていない。
最初は不安しかなかった。
だがいざ、ステージに上がると、何かかプツンと音を立てて切れた。
それからはあまり覚えていない。
多分、ミスもなくやり切ったと思う。
司会が締めの言葉を言って、二人は舞台袖に引っ込む。
ナルトがまだ興奮覚めやらぬ様子でサスケに言った。
「すげえ、お前ってば、すげえってばよ!」
「そ、そうか?」
殆ど覚えていないサスケとしては笑うしかない。
頬の筋肉がヒクヒクする。
とにかく終って良かった。ナルトも喜んでいるし万事OKだろう。
「この後は打ち上げだってばよ。サスケも行くだろ?」
「いや、俺は良い。まだ仕事が残ってるからな」
まだバクバクと音を立てている心臓を宥めるようにフウッと息を吐きながらそう答えた。
するとナルトはシュンと項垂れる。
「ごめん…それってば…俺のせいだよな……」
やると決めたその日から、二人は毎晩のように稽古した。
それでも他のコンビに比べると全然足りない。やっつけペアなのは間違いないのだが、それでもやるからには妥協したくはない。自分が今できる最善でありたいとサスケは思っていた。だから練習時間を作る為に連日の残業をなくし、終業すると同時に会社を出た。もちろんまだ仕事は残っている。幸い納期の近い仕事がなかったのだけが救いだ。
その為、朝はいつもより一時間早く家を出て仕事に着手した。それでもやり切れなかった仕事がいくつかある。
終ったら即効帰って仕事しよう。サスケはずっとそう思っていた。
だが露骨に落ち込まれると良心が痛む。
「別にお前のせいじゃない」
サスケ自身がやると決めた事なのだ。ナルトを責めるつもりは毛頭なかった。
「だが悪いな。付き合ってやれなくて」
「ううん。俺も早く帰るってばよ!」
ナルトが笑顔で答える。
練習をしていて思ったのだが、ナルトの笑顔は心を和ませる。
意見の食い違いから衝突も多々あり、喧嘩もしたが、ナルトが笑うともう何でも良いかという気分にさせられるのだ。
仕事で疲れて帰ってきてもそうだ。
おかえりと笑顔で出迎えられると何だかちょっとくすぐったい気持ちになる。
「お前はゆっくりしてくれば良い」
自分と違ってナルトにとっては打ち上げも意義のあるものだ。
ビジネスチャンスだってないとは言い切れない。
「……うん」
ナルトが複雑そうに顔を歪めた。
マイペースで強引に突き進んで行く所があるかと思えば、結構人のことを気にする一面もある。
今までのサスケの周りにはいなかったタイプだ。
「じゃあな」
コロコロ変わるナルトの表情は本当に飽きることがない。
そう思いながらサスケは軽く手を上げて、楽屋を出た。
ナルトが家に帰ってきたのは夜十時を少し回る頃だった。
カチャカチャとロックが解除される音にサスケはぼんやりと思った。
舞台が終わり、家に着いてから四時間余りが経過している。着替えを済ませてからは一心不乱に仕事をしていたので、もうそんな時間かと驚く。
「仕事、どうだってばよ?」
サスケの部屋の扉を開いて顔を覗かせたナルトが尋ねる。
「ただいま」「おかえり」よりも前にまずそれかとサスケは苦笑いを浮かべたが、ずっと気になっていたのだろう。
飲み会が終って帰ってくるには早い時間からも予想がつく。
「二次会、行かなかったのか?」
「あ、二次会。行ったってばよ。でも流石に三次会は明日俺も朝早いしさ」
鳴門はマンションの下のコンビニで早朝のバイトをしていた。
「そうか」
「おう。で、終りそう?」
「ま、とりあえずはな」
そう言うと鳴門は心底安堵して胸を撫で下ろした。
「入って良い?」
おずおずとした口調で尋ねる。
「ああ、別に構わない」
いつもなら「入るぜ」と入り口で宣言して返事を待たずに勝手に入ってくるのに、いつもと微妙に様子の違うナルトにサスケは首を傾けた。
ほんのり頬が赤いが酔っているのだろうか?
「ナルト」
「あ、あのさ、サスケっ!」
ナルトはサスケに近づくと、パソコンを打つ手を止めて自分を見つめる彼の両肩をガシッと掴んだ。
青い僅かに潤んだ瞳がサスケを真っ直ぐに見つめている。
「何だ?」
訝しげに眉を寄せそう尋ねると、鳴門は突拍子もない行動にでた。
いきなりサスケの体をグッと引き寄せて抱きしめる。
「な、ナルト!」
動揺するサスケをグッと抱きしめた。サスケはナルトの胸に顔を押し付けられ、息苦しさにナルトの背中をドンドンと叩く。
「俺、俺さ、サスケ」
ドン、ドン、ドン
「今日、すっげえ褒められたんだってばよ」
ドン、ドン、ドン
「俺すげえ嬉しくてさ。そしたらプロデューサーがさ、次の仕事をくれたんだ」
夢見心地で答えるナルトにサスケは我慢の限界とばかり、懇親の力で持って抱きしめる胸を押し、突き飛ばした。
「サスケ」
「苦しいってんだよ!このウスラトンカチ!」
何故、突き飛ばされたのか分からない様子のナルトにサスケはハアハアと荒々しく息を吐きながら叫んだ。
「ご、ごめんってばよ。俺ってば夢中で」
「いい。それで次の仕事って良かったじゃねえかよ」
少しは恥ずかしい思いをして舞台に出てやった甲斐があったというものだ。
「うん。そうなんだって。しかも今回は高級ホテルでの営業なんだってよ!もちろん宿泊代、交通費は無料。しかも三食つきだぜ!」
これほど良い条件はない!とばかりにナルトは胸を張った。
「そうか、そりゃ良かったな」
確かに若手芸人にしてみればこれ以上ないくらい美味い仕事だろう。何せ高級ホテルで仕事が出来て、三食付き。しかもそれは全て事務所のお金なのである。
自分でもそう言ったクセにナルトは「…うん」と力なく呟いて俯いた。
「そ、それでよ……」
人差し指の先と先をくっ付けてゴニョゴニョと呟く。チラリと上目遣いでサスケを見るにナルトにサスケは眉を寄せた。とても嫌な予感がする。
「何だ?」
そう尋ねると、鳴門は意を決したように――――。
「次も俺の相方になってください!」
そう大きな声で言って、土下座してガバッと勢い良く頭を下げた。
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1をUPしてすっかり2をUPするの忘れてました(汗)
現在3まで連載中。
夏コミにて4を配布予定です。
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