CHANGE

03.


「とりあえず俺ん家に来い」
 大きいサスケにそう言われて連れてこられたのは物心ついた頃から慣れ親しんだ自分の家だった。
「へ?ここってサスケんち?」
 ナルトは驚いて何度も瞬きをした。
(それって一緒に住んでるってことか?)
 それは嬉しいけど……だけどそれだったらサスケの家の方が大きいのに、何故自分の家なのか? 
 すると自分の考えていることが分かったのだろうサスケがナルトの頭をガシリと掴んでドスの聞いた声で言った。
「文句あるかウスラトンカチ」
 ナルトはその呼び方は十年経っても変わらないんだな……と思いつつ、凄みをましたサスケの低音に「ありません」と首を横に振った。
家の中に入ると部屋は随分と様変わりしていた。
 電化製品なんかのたぐいも全て新しいものになっていたし、ベッドもかなり大きなものが一つ。
(うわー。もしかしてこれって同棲ってやつかよ。しかもベッドが一つって。俺ってば俺ってば結構やるじゃん)
 何とも言えない笑みがこみ上げてくる。
「おい、ニヤニヤすんな。気持ち悪い」
「だってよう」
 チラリとナルトが視線をベッドに向けた。刹那、ナルトの脳天に痛恨の一撃が降ってくる。
「いでぇ!何すんだよ」 
「変なこと考えてんじゃねえよ。言っておくがお前んちは別にあるからな。ここは俺の家だぞ」
「え、そうなの?」
 キョットンとナルトが言い返す。
 その割には頻繁に使用されているような気がするのだが。
「ああ。この時代のお前の家は別にある。この時代のお前が引っ越すことになって俺が使ってる」
「なんで?」
 サスケの家の方がでかいのに?
 素直に疑問を口にするとサスケの顔が赤くそまった。
「え?」
「どうでも良いだろ。そんなことは。とにかく飯だ。飯」
 サスケはそう言うと両手両足を同時に出すという奇妙な動きで台所に消えてしまった。
「何を動揺してるんだ?」
 意味が分からずナルトは首を傾ける。
 何か自分は言っただろうか?
 うーんと頭を捻ってみるが答えは見つからない。
 そうこうしている間に台所から軽快なリズムで野菜が切られていく音が聞こえてくる。
 野菜は嫌いだがサスケが作ってくれるなら何でも嬉しい。すぐに香ばしい匂いが漂ってきてナルトの腹がグウッと豪快に音を立てた。


 サスケの顔が好き。
 仕草が好き。
 きつい瞳も好き。
 二年半ぶりに再会した時も綺麗になったなあって思ったけど、十年経ったらよりいっそうだ。
 スプーンでチャーハンを掬って口に運ぶ。
 それだけの動作に目が離せなかった。
 本当、綺麗だなってぼんやりと思う。
 十年後の自分はきっと彼のことが気になっていつもヤキモキしていると思う。
 もちろんそれは今だって同じだが……十年後はもっとだ。
(忍びって目立っちゃダメなのに。サスケが歩いてたら絶対見ちまうぜ)
 白い肌に映える黒い髪と黒い瞳。
 女だけじゃなく男だって目を引かれずにはいられない。
「おい」
 サスケに声を掛けられナルトは持っていたスプーンを思わず机に落としてしまった。
 慌てて拾うとチャーハンを掬って口に運ぶ。
そんなナルトにサスケは大きなため息をついた。
「そんなに俺の顔をジロジロ見るな」
「べ、別に見てなんか」
「見てるだろ」
「うっ」とナルトが言葉を飲み込んで顔を伏せる。
 何だっていうんだ?と思いながらサスケは残りのチャーハンを片付けて言った。
「そんなに凝視されたら食べにくいだろ」
 実際、さっきからナルトの視線が気になって味なんて全く分からなくなってしまった。
 ナルトがサスケを見上げる。
 空色の大きな瞳。
 好きな青。
 この瞳に弱いのだとサスケは自覚していた。
子供でも大人でも困った奴だ、とサスケは思った。
思わず笑みが零れる。
 ナルトは何か言いたそうにサスケを見ていたが、何故か頬を赤く染めると俯いて夢中でチャーハンを口に運ぶ。
下を向いたナルトの旋毛が見えてサスケは目を細めた。それにしてもこういうのも久々だとサスケは思う。十八になったあたりからメキメキと身長が伸び続けて、気がつくとあっという間に抜かされて、すっかり目線が上になってしまった。
だからこうしてナルトを見下ろしているのが不思議な感じがして…少し嬉しかった。
「どうかしたか?」
あと少しという所でナルトの手が止まっているのに気づき声を掛ける。するとナルトは「ううん。何でもない」と言って首を横に振った。
「何だ。気持ち悪いぞ」
「本当に何でもないんだって。ただちょっとさ……」
 ナルトはボリボリと頭を掻きながら、苦笑いを浮かべた。
「サスケってば綺麗だなって思って……」
 本当にヤバイくらいに。
 十年経って大人の色っぽさが増したサスケにさっきから心臓が壊れそうなくらいけたたましい音を立てている。
「ば、バカ言ってないでさっさと食え!」
 ナルトの言葉にサスケも耳まで赤くなる。
「う、うん」
 とにかく今は食べることに集中しようとナルトは残りのチャーハンを夢中で掻き込んだ。



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